「過去の成功体験が未来の成功体験をつくる」という言葉は、いかに組織変革においてスモールウィン(小さな成功)が重要であるかを意味しています。なぜ人は行動できないのか。それは、行動すればスモールウィンを実感できる(かもしれない)という期待につながる成功体験を、これまで十分に積み重ねることができていないからだと考えることができます。誰しも、これまで成功したことがないことに挑戦するのは怖いと思うのが自然です。
ただ、一方で、変革リーダーが理解しておかなければならないのは、「成功は失敗の母である」ということです。過去の成功体験は、その当時の環境に適応した結果得られたものですが、時代が変われば環境も変わりますから、過去と同じように行動しても適応できるとは限りません。しかし、過去の成功体験があるだけに、「今度も同じようにやればきっと上手くいくはずだ」という暗黙の前提があるだけでなく、過去とは違う行動を取ることは怖いし、もっと言えば過去の自分の行動を否定するような行動を取ることは避けたいと思うのもまた、自然なことです。そうして、過去の成功体験が未来の失敗体験をつくってしまうことになります。
だからこそ、変革リーダーは、この「過去の成功体験が未来の成功体験をつくる」「過去の成功体験が未来の失敗体験をつくる」という相反するように見える物事をつなぐための考え方を理解しておくことが大切です。それが、「時と場合と人による」という考え方です。つまり、
「どの時と場合と人によって、過去の成功体験が未来の成功体験をつくることになるのか?」 逆に、 「どの時と場合と人によって、過去の成功体験が未来の失敗体験をつくることになるのか?」
を、一般化せず、個別に丁寧に把握し判断していくのです。
様々な質問に題して同じ言葉で答えることができる。それが「時と場合と人によりますね」という言葉です。この言葉を考えるための道具として使いこなすことができる変革リーダーこそ、変化に適応する組織に変革するための、変化に適応するリーダーであると言えます。
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