top of page

スタッフとの信頼関係を大切にしながらも、その信頼関係にこだわりすぎない

Writer: 佐藤 和弘佐藤 和弘

同じムラ(組織)で生活をともにする以上、スタッフ間での信頼関係は大切です。誰しも毎日を穏やかに過ごしたいでしょうから、「この人は私を裏切らない」「この人は私をわかってくれている」「この人なら心を許せる」といった信頼関係のあるスタッフと一緒に毎日の業務を行いたいはずです。


ただ、同じムラの住民でも、特に組織変革を担うリーダーの立場だと、この信頼関係というのは悩ましいジレンマだと言えます。というのも、「スタッフの求めること」と「スタッフのためになること」は同じとは限らないですし、「スタッフの求めること」と「組織としてすべきこと」も同じとは限らないからです。


例えば、ある業務でこれまで長年続けていたやり方を、時代や環境変化に適応するために新たなやり方に変更しようとしたとします。ただ、従来のやり方に強いこだわりと自信を持って業務を行ってきたスタッフAさんにとってみれば、その業務のやり方を変えるということは、自分の存在意義を否定されたような思いを抱いてしまうかもしれません。


「これまで私が長年頑張ってやってきたことは何だったの・・・?」


もちろん、変革リーダー自身にAさんの存在意義を否定するような意図はなかったとしても、Aさん自身がそう受けとってしまえば(意味づけてしまえば)、本人にとってそれが真実になってしまいます。もし、そのような背景があるなかで、変革リーダーが新たな業務のやり方の導入を推し通そうとすると、


「◯◯さんは私のことをわかってくれていない!」


と変革リーダーとAさんの信頼関係が崩れてしまいかねません。しかし、新たな業務を導入することが結果的にAさんのためになり、組織として行うべきことであり、もちろん患者さんのためになることなのであれば、少なくとも一時的にAさんとの信頼関係を崩したとしても、推し進めなければなりません。したがって、


「あの時は、私のことを考えてくれていないと正直落胆したんです。でも、今なら◯◯さんの言っていたことの意味がわかります」


といったように、長い伏線回収を行うことができるように、リーダーには、スタッフとの信頼関係を大切にしながらも、その信頼関係にこだわりすぎない絶妙なバランス感覚が求められます。

Recent Posts

See All

日常を忘れさせない学びの場づくり

一般論として、医療における研修は、現場業務という日常の場とは切り離された非日常の場になりやすいと言えます。たしかに、業務の合間に行われる研修は、その間だけは日常(の忙しさ)を忘れさせてくれる、休息の場という側面も実際にはあるでしょうし、そのような場があること自体は有意義でし...

自分自身の「感情」が、論理的思考を身につけることを邪魔する

「(できれば) 物事を論理的に考えたい」と思う人は多いでしょうが、論理的思考を身につけることは実際には容易ではありません。 論理的思考に関する書籍を何冊か読破した、あるいは(単発の)研修やセミナーで学んだといった段階に留まらず、何年にも渡り日々の日常業務のなかで繰り返し体験...

合理は他者ではなく自分自身に向ける

世間ではとかく「正論」という言葉が否定的な意味合いで使われがちです。 「それって正論だよね」 「正論なんて聞きたくありません」 これは、あらためて考えてみると、「正しい論理なのに間違っている」といっているようなものですから、一見矛盾する意見のように見えます。ただ、突き詰めて...

Comentários


© 2013 by Kazuhiro Sato

 

bottom of page