昨今のAIの基盤となっているニューラルネットワークは人間の脳の神経回路を模したものですが、一方で、AIを理解するということは人間(の脳)を理解することにつながるという学びの相互作用的な関係にあると言えます。
そのうえで、大規模言語モデルにおいて「トランスフォーマー」とともに重要な技術と言われるのが「自己教師あり学習」であり、これも人間の学習に引き寄せて考えてみるとさまざまな示唆を得ることができます。
自己教師あり学習ということを「自分で教師あり学習の問題をつくる」ととらえてみると、僕らが行う学習もまた、自己教師あり学習を行うことが大切だと言えます。
僕らが何かを学ぶ際、餅は餅屋でその分野の専門家の話を聞いたり、本を読んだりします。これは言い換えれば、「どのような問題(問い)について答えるべきか?」について、他者から与えられているということになります。
一方で、ここでいう「人間における自己教師あり学習」は、日常遭遇するさまざまな出来事を通じて、自分自身で問題(問い)をつくりだし、それに答えていくということを意味しています。
「他者から学ぶ」のに対して、このように「自分から学ぶ」ことのメリットは、まさに「実体験に基づくリアリズム」にあると言えますが、さらに言えば、「物事の文脈理解」に役立つと考えることができます。
自分が体験する出来事の中で、どのような問題(問い)に答えるべきかを考え、実際に答えを出していくということは、その問題(問い)や答えは、自分自身の半径5メートルと映像レベルでつながっています。したがって、ある問題(問い)や答えが自分の半径5メートルのどのような出来事にどのように関連しているのかといった文脈理解につなげやすく、それによって学びをより具体的な行動に移しやすいと考えられるからです。
加えて、他者から学ぶのは機会が限られますが、自分から学ぶのは機会をつくりやすいという柔軟性のメリットもあるでしょう。
もちろん、これもor(どちらか?)ではなくand(どちらも)の観点にあたりますが、他者から学ぶだけでなく、自分から学ぶという選択肢も意図的に持っておくことが大切と言えます。
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