「正しいことなのにできない」 「間違っていると分かっているのにやらざるを得ない」
人をそのような状況に陥らせる組織の空気の支配がある以上、個人に「正しさ」を求めても限界があります。むしろ、個人に正しさを求めるほどに、組織の空気の実態から目を背けてしまいかねません。
例えば、あるミーティングで発言しなかったスタッフAさんがいたとします。それは、もしかしたら、「本当は私は反対なんだけど、今ここで反対したらBさんに目をつけられて、後でどうなるかわからない・・・。他のスタッフもそのことをわかっているから、誰も発言しようとしない。こんな空気の中で、とてもじゃないけど私は発言できない・・・」と熟考した結果かもしれません。それなのに、「Aさんには主体性がない」と表面的にとらえてしまうと、判断を大きく誤ることになってしまいます。
そもそも、あくまでも仕事上の関係に過ぎない組織の空気の中で、本当の意味で本音を伝えることができる人がどれだけいるのだろうかと考えてみると、自分を守るために「本音と建前」をある意味賢く使い分けることは、「人は本来弱い生き物である」というとらえ方を前提にすれば、やはり自然なことだと言えます。そうであるならば、
「個人に正しさを求めるために、まずは組織の空気と向き合う」
ということが大切になります。そして、その組織の「空気のメカニズム」を明らかにしていくことによって、「なぜ正しいことができないのか?」「なぜ間違っていると分かっているのにやらざるを得ないのか?」という本質(本人の半径5メートル)に迫っていく。そのためのリーダー自身が迷子にならないための羅針盤が、組織の2:6:2の法則です。
組織の2:6:2の法則もまた、他の考え方と同様に、単に理解するだけでなく、「使っていく」ものです。
「抵抗派に当たるBさんと慎重派の他のスタッフによってつくられているネガティブな空気によって、Aさんは発言しないのではなく、発言したくてもできないのかもしれない。私(他者)から見れば一見非合理的に見えるけれど、Aさん(本人)にとっては合理的な理由はそこにあるのではないか。だったら、そのような組織の空気を変えないと、いくらAさんに発言を求めても、いや発言を求めるほどに、本人の本音は見えなくなってしまうだろう。だったら・・・」
といったように、組織の2:6:2の法則をよりどころにしながら、まずは組織の空気と向き合い、それによって個人の正しさを求めていくことが大切になります。
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