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同じことを言い続ける力

Writer: 佐藤 和弘佐藤 和弘

物事には、時代によって変わる物事もあれば、時代によらず変わらない物事もあります。


医療現場で求められる能力においても、「これからは◯◯が大事だ!」といったように、ブームやトレンドとしてその時その時で話題になる知識やスキルを身につけ発揮していくことは大切です。ただ、「これまでも大事だし、これからも大事だ!」といったように、言わば「当たり前のこと」を当たり前に身につけ発揮していくこともまた、大切になります。変わらない物事が土台となるからこそ、変わり続ける物事を支えられると考えることができるからです。


一方で、その土台としての変わらない物事を学ぶうえでの難所があるとすると、それは言わば「耳タコ問題」、つまり「また◯◯の話か・・・。もういいよ・・・」といったように、同じ話はつまらない、飽きたと感じてしまいやすいことではないでしょうか。

人は往々にして目移りしてしまう生き物と言えますから、新しい知識やスキルを学びたいと考えることは自然なことです。だからこそ、変わらない物事を自組織に浸透させるためには、その目移り力の影響力に負けず、「同じことを言い続ける力」がリーダーに求められます。


リーダーではありませんが、僕自身、ノンテクニカルスキルに関する初回の講演では、例えば2W1H(問題解決の六大大陸)など、職種や分野、業界を越えても、長年、基本的に同じことを伝えています。それは、この考え方がこれからも変わらない、つまり不変的(さらに言えば、汎用的かつ根本的でもある)だと考えているからです。なので、どの講演を聞いても、「また同じことを言ってるな」と感じると思います。


もちろん、目新しいことも伝えたいですし、「逆ドミノ倒し現象」など、新たな考え方(ネーミング)を思いついたらお伝えすることもありますし、細かい表現を変えることもありますが、2W1H(問題解決の六大大陸)は不変的だと考えている以上、これからも同じことを言い続けるでしょう。逆に、言ってることがコロコロ変わったほうが、説得力がなくなってしまいます。


現在さまざまな機会に提案している「生成AIの医療現場での活用」においても、生成AI自体は時代が変わり登場したものですが、ノンテクニカルスキルとの関係性でとらえてみると、これまで人間が発揮してきたノンテクニカルスキルを生成AIにも発揮してもらおうという話で、ノンテクニカルスキル(問題解決の六大大陸を基にした問題解決プランの作成)自体は変わっていません。


変わり続ける物事と変わらない物事。これも、or(どちらか)ではなくand(どちらも)が大切です。そのうえで、伝え続けることが難しい後者においては、


「また同じことを言ってると思われるかもしれないけれど、それでも同じことを言い続ける!」


という意志力が求められます。ちなみに、その意志力を高めるためには、伝える側自身が、不用意に「他と比べない」ということが1つの考え方だと思います。隣の芝生は青く見えてしまうものですから。

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