有事標準のリーダーは平時では報われない。
アレもコレもを選べる平時において、アレかコレかを選ぶような決断を行わざるを得ない状況は、確かにイメージしにくい。だから、リーダーが時折口にする有事標準の言葉は、組織の人たちには届かない。
さらに、ただ届かないだけならまだしも、変人(変わった人)扱いされたり、オオカミ少年扱いされるどころか、「せっかく(組織が)明るく仲の良い雰囲気なのに、水を差すようなことを言わないでください」と批判すらされてしまいかねない。
一方、平時における有事標準の言葉は、実際の有事に遭遇すれば組織の人たちに届くが、だからといってリーダーはやはり報われない。
有事においても、いや有事だからこそ、リーダーには率先垂範力が求められる。不確実性が高く、右に行くべきか左に行くべきか、その正解を誰も知らないなかでは、皆怖くて一歩を踏み出すことはできない。だから、勇気があろうがなかろうが、リーダーが率先垂範で一歩を踏み出し、手本を見せなければならない。これは、本人にとっては過酷そのものである。
加えて、Aを選んでもBを選んでも不幸な結果になるかもしれない二者択一のなかで、その両方の立場の人たちの顔が見える中で、厳しい決断を迫られる。その決断が正しいかどうかは歴史を振り返らなければわからず、一方で組織の人たちは今この瞬間の行動が正しいかどうかを知りたいとリーダーに問う。
このように、有事標準のリーダーは、平時でも有事でも報われない。それでもなお、その立場に身を置く以上は、それを覚悟するしかない。
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