問題解決の六大大陸において、【目的】だけが願望の世界の話であって、【現状】【あるべき姿】【問題】【原因】【対策】は全て現実世界の話である。したがって、問題を正しく解決する前に、正しい問題を解決するためには、いかに【現状】を映像レベルで把握しながら、それを材料に【あるべき姿】を映像レベルで描いていかなければならない。
ただ、ここで大事なことは、「その【あるべき姿】は、『誰のため?』なのか」、つまり【目的】を押さえること。ともすると、医療者は患者さんに貢献するという大義名分がDNAに擦り込まれているために、当たり前になり過ぎてしまい、実は自分たちのための問題解決と捉えてしまいやすい。
しかし、あくまでも問題解決は「患者さんのあるべき姿(ありたい姿)」に「医療者側のあるべき姿(やるべき姿)」を擦り合わせていく営みである。患者さん視点のありたい姿のない【あるべき姿】は、主役のいない物語であり、物語の意味をなさない。
一方で、患者さんのありたい姿を描くときにやりがちなことは、一般論化してしまうこと。例えば、「安心して治療を受けたい」という【あるべき姿】は、田中さんにも鈴木さんにも伊藤さんにも誰でも当てはまってしまう。そうではなくて、田中さんであれば田中さんの「顔」が見えるくらいの「個性的なありたい姿」を描いてはじめて、医療現場の問題解決の最小単位である固有名詞の【あるべき姿】を描くことができる。
1つのリアルケーススタディも、本当の意味で問題解決の議論をしようとすれば、【あるべき姿】を描くだけで平気で2時間かかる。一般的に、もしこのことに違和感や大変さを感じるのであれば、それはこれまでの医療が「医療者側の【あるべき姿】」だけを暗黙の前提にして楽をしてきてしまっていたのではないかと健全に疑わなければならない。
本当の意味の【あるべき姿】は、そんなに簡単に描けるものではないのである。
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