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  • Writer's picture佐藤 和弘

言葉にコントロールされるのではなく、言葉をコントロールする

時代に応じて、さまざまな「新しい言葉(用語)」が出てきては次第に古くなり、また別の新しい言葉に置き換えられていきます。


もちろん、新しい言葉を使うメリットはあって、それは「これまでの固定観念をリセットできる」ことでしょう。これまで、ある言葉を使っていたが、どうも組織に浸透していかない。あるいは、本来と異なったとらえ方で定着してしまっている。このような「言葉の固定観念化」が起こってしまっている場合、「これからは◯◯が大事です!」といったように、新しい言葉を使い始めることによって、組織全体で「言葉のとらえ直し」が行えるのは便利と言えます。


新しい言葉には「何かが変わるのではないか!?」という期待感が得られるものですが、一方で、あくまでもそれは言葉に過ぎないので、古い言葉を新しい言葉に言い換えたからといって、それだけで勝手に物事が変わってくれるわけではありません。


さらに言えば、本質的には同じ意味合いを持つ言葉を次々に言い換えることは、その言葉の表面的な理解に留まってしまいかねません。


よく例に出す「理念」と「パーパス」は、表面的には違うとらえ方もできるでしょうが、本質的には同じ意味合いを持ちます。ですが、理念からパーパスに使う言葉を変えたとしたら、理念という言葉が古い言葉で、パーパスという言葉が新しい言葉をとらえてしまい、ともすると理念という言葉を(古い言葉であるために)軽視してしまうかもしれません。


ですが、理念もパーパスも、言葉は違えど本質的な意味合いは同じで、それらは「目的」を意味します。「目的が大事です!」といって反論する人はいないはずで、であれば、理念という言葉を使おうが、パーパスという言葉を使おうが、また別の◯◯という新しい言葉を使おうが、実はどれも同じ意味合いのことを(言葉を変えて)大事だと言い続けているということを理解しておくことが大切です。


繰り返しになりますが、新しい言葉を使うことにはメリットもあるので、実際は組織の状況により都合良く使っていけばいいのだと思います。ただ、大事なことは、「言葉にコントロールされる」のではなく、あくまでも「言葉をコントロールする」ことだということを押さえたうえで。

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