
ビッグワードを具体化に表現する
日常はもちろん、医療現場でも、実に様々なビッグワードを使った「お互いにとらえ方が異なっている(のにそれに気づかない)コミュニケーション」が行われているはずです。では、どうすればいいのでしょうか。
人は本来弱い生き物だからこそビッグワードを使ってしまう
人がついビッグワードを使ってしまうのは、「ビッグワードを使うとコミュニケーションが楽になるから」と言えます。「患者さんのQOLを高めましょう!」という意見に対して、「QOLを高めるべきじゃない!」という反論は起こらないでしょうし。「責任を持って業務します!」という意見に対して、「あなたは責任を持つべきじゃない!」という反論も起こらないでしょう。ビッグワードを使えば、あいまいなコミュニケーションでやり過ごすことができるので、とても楽なのです。
この背景と言えるのが、「人は本来弱い生き物である」という考え方です。つまり、人は本来弱い生き物だからこそ、できれば面倒なことは避けたいと思い、つい無意識的にビッグワードを使ってしまう場面が少なくないのではないでしょうか。

普段の業務で使っているビッグワード
学ぶとは「見えないものが見えるようになること」だと言えます。これまでビッグワードという言葉を知らなかったがゆえに、数多くのあいまいなコミュニケーションが右から左に過ぎ去っていたのであれば、先ほどのようなコミュニケーションのなかに、どれだけビッグワードがあるのか、今は見えるようになったはずです。
一方で、学びは自組織の事例に引き寄せることが大切です。では、みなさんの普段の業務で、どのようなビッグワードを使っているかを、一度考えてみてください。ビッグワードは、日常用語だけではなく、専門用語や略語にいたるまで、さまざまな言葉があります。その中には、他の職種、分野、施設、そして患者さんやご家族に伝えたときに、意味を理解してもらえない言葉や違ったとらえ方をしてしまう言葉もあるかもしれません。

ビッグワードから抜け出すための第一歩
では、ビッグワードを使ったコミュニケーションを避けるためには、どうすれば良いのでしょうか?答えはシンプルで、「具体的には」という言葉を意図的に使ってみることです(もちろん、すべての場面で無理やり使うということではありません)。ビッグワードという抽象的な言葉は、「具体的には」という言葉を使ってしまえば、具体的に説明せざるを得ないからです。このように、「脳みそに強制(矯正)ギプス」をはめながら、ビッグワードを使わずに具体的に表現する「癖づけ(習慣化)」をしていく、つまり、スキルを身につけるために反復練習していくのです。

映像レベルで具体的に表現する
さらに目指していきたいのが、「映像レベルで具体的に表現する」ことです。例えば、ある人が「リーダーシップが発揮できるようになりたい!」と言ったとします。「うん・・・、それは良いことだね」とは思うかもしれませんが、誰に対してどのように行動することを言っているのか、肝心な「場面」をイメージできないはずです。
それに対して、「このような治療での緊急対応の際に、『Aさんこれをお願いします!Bさんはこれを、Cさんはこれをしてください!』といったように、テキパキと指示を出している、このようなリーダーシップを発揮したいんです!」と説明すれば、相手に場面を思い浮かべてもらうことができます。それによって、お互いが異なるとらえ方をしてしまうことをできるだけ防いでいくのです。

