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抵抗派への対応のポイント

​自組織のスタッフを組織の2:6:2の法則を基に分けてとらえた際、皆さんが気になるのは、やはり、抵抗派に当たるスタッフへの対応ではないでしょうか。このページでは、そのためのポイントを押さえていきます。

なぜ、組織の2:6:2の法則を「リーダー自身が迷子にならないための羅針盤」と呼ぶのか

「組織のお困りごとの8割くらいは人間関係などスタッフに関することで、さらにその8割くらいは抵抗派に当たるスタッフのこと」

あくまでもものの例えですが、このように表現してみると、大きくうなずく方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般論として、リーダーは、「この前も、Aさんが後輩スタッフに高圧的な態度を取って、そのスタッフが萎縮してしまったんです。Aさんに注意したんですが、『私、何か間違ったことを言いましたか!?』と言い返されてしまったので、それ以上は何も言えなくて・・・」といったように、特に抵抗派に当たるスタッフへの対応に苦労されているのではないでしょうか。

したがって、皆さんがやはり知りたいことは、推進派や慎重派よりも、抵抗派に当たるスタッフへの対応のポイントだと思いますが、その前に、なぜ、私が組織の2:6:2の法則を「リーダー自身が迷子にならないための羅針盤」と呼んでいるのか、その理由をお伝えします。

 

それは、「自組織のスタッフ全体をみたときに、推進派が2割いて、慎重派が6割いれば、抵抗派も2割はいることが『自然なこと』である」と受け止めていただきたいからです。逆に言えば、スタッフ全員が推進派のように積極的であるほうがある意味では不自然なので、健全に疑ったほうがよいかもしれません。このように考えると、少し肩の荷が降りる気がしませんか?

よく多様性の時代と言われますが、もともと人は多様で、10人いれば10通りの個性があります。だから、現代になっていきなり多様になったのではなく、「多様性が大事!」という主張をしてもよい社会の空気に変わったというのが、より正しい理解なのではないかと考えています。

 

組織もそうで、それぞれのスタッフにはもともとそれぞれに個性があり、いろんな考えや意見を持っているはずです。だからこそ、抵抗派のような言動を取るスタッフが2割くらいいるのも自然なことだと思います。もちろん、抵抗の程度によりますが。

抵抗派も2割はいるのが自然なことだと受け止める

抵抗派への対応は「説得」ではなく「共感」を

いくら「抵抗派も2割はいることが自然」だと受け止めても、実際は抵抗派に当たるスタッフに何らかの対応をしなければならないのであれば、大事なことは「説得」ではなく「共感」を示すことです。

そもそも、一般的に、なぜ抵抗派は声が大きいのか(繰り返しですが、声が大きいからといって抵抗派とは限りません)、それは、自分で行動する勇気はないので、その代わりに、誰かに自分の想いを理解してもらうことで、自分が行動しなくてよい(このままでいい)状況をつくりたいからではないでしょうか。だからこそ、抵抗派が求めていることは、説得ではなく共感だと言えるのです。

 

抵抗派への対応として、本人の行動を変えるための説得をついやってしまいがちかもしれませんが、そもそも抵抗派は、誰かから説得されたいとは思っていないはずです。であれば、抵抗派本人に「直接的に」行動を変えてもらうことは諦めて、せめて慎重派が萎縮してしまわないように、声のボリュームを下げてもらうことに注目したほうが、結果的に組織の空気をポジティブに変えることにつながるのではないかと考えています。

​一方で、共感を示す際には、「賛同」してしまわないようにすることが大切になります。例えば、抵抗派に当たるスタッフから「これまでのやり方で大きな問題は起こっていないので、やり方を変える必要はないんじゃないですか!?」といったことを意見された際、「たしかにそうだよね」と賛同してしまうと、それはそのスタッフの抵抗する力を高める手助けをしたようなもの。その後に何か不都合なことがあった場合に、「この前、◯◯さんも賛同してくれましたよね!」と言われてしまうかもしれません。

 

だからこそ、「なるほど、あなたはそう考えているんですね!」といったように、賛同せずに共感だけ示していくのです。

抵抗派への対応は 「説得」ではなく「共感」を

​ポジティブな空気を通じて間接的に説得する

もちろん、ただ共感を示すだけでは、抵抗派に「もっと主張したほうが自分にとって都合がよい」ととらえられてしまうかもしれません。リーダーが防ぐべきなのは抵抗派の声のボリュームを下げて慎重派が萎縮しないようにすることなので、これだけでは本末転倒になってしまいます。したがって、抵抗派の声のボリュームを下げる具体的なテクニックをお伝えします。それは、意図的に「論点を変える」ことです。

例えば、あるミーティングの際に、抵抗派に当たるスタッフから新しい取り組みを行うことに対する反対意見が出たとします。その場合、リーダー(ファシリテーター)は、次のように論点を変えていきます。

「反対意見を出していただきありがとうございます。では『逆に』賛成意見がある人はいませんか?」

抵抗派の目もあるので、それでもなかなか他のスタッフが賛成意見を出せないようであれば、

「反対意見と賛成意見の両方を出してみて、それからこの取り組みを行うべきかどうかを決めたほうがよいと思いますので、ここではあえて賛成の立場に立ってみたうえで、お一人おひとりご意見をお願いします!」

といったように、順番に話してもらうのも一つの方法です。いずれにしても、抵抗派の意見に関する論点を変えて、抵抗派がそれ以上発言できない状況を意図的につくることによって、抵抗派の声のボリュームを抑えていくのです。

一方で、抵抗派への対応として直接的な説得を避けたうえで、間接的な説得を行う方法をお伝えします。それは、「急がば回れ」で、組織の空気をポジティブに変え、その「ポジティブな空気を通じて説得する」ことです。

地道に小さな成功をつくり続けてラーメン屋の行列を増やし、スタッフの多数派が組織をより良い方向へと変える行動を取り始め、ポジティブな空気ができてきたとします。いくら抵抗派といえど、このようなポジティブな空気に支配されているなかで、自分が行動したくないための抵抗はしにくくなるのではないでしょうか。すると、自分自身はやっぱり変わりたくはないけれど、そのために他者を批判するようなことは控えざるを得なくなるかもしれません。こうして、ポジティブな空気を通じて間接的に説得するのです。

​空気は人ではないため、目に見えず、手も触れられない存在を相手に批判してもしかたありませんし、空気を相手にすれば、直接的に傷つく人も出てこないことになります。組織変革は、ポジティブなこともネガティブなことも、あえて、人ではなく「空気」のせいにしていくのです。

ポジティブな空気を通じて間接的に説得する
本当に頑張っている人が報われる組織へ

© 2013 by Kazuhiro Sato

 

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