組織変革と空気のマネジメント

組織を動かすノンテクニカルスキル

2W1Hやビッグワードなどの技術は、あくまでも現状満足の空気に支配されている組織を、あるべき姿と現状のギャップを埋め続ける組織に変革していくための手段(道具)に過ぎません。

​このページでは、組織変革の考え方と方法論について、詳しくご紹介していきます。

不毛な多忙と人を動かすマネジメント

「人が足りない」「業務が忙しい」

この2つは、医療で代表的な現場の「お困りごと」です。ただ、さらに現場スタッフを苦しめているのは、単に業務が忙しいのではなく、それが「不毛な多忙」になってしまっていることです。成果が出ている実感がないのに、ただただ多忙な業務をし続ける。これでは、「こんなことをするために苦労して医療者になったわけじゃないのに・・・」と落胆しても仕方ありません。

このような不毛な多忙が起こるのは、「人を動かすマネジメント」に原因があります。スタッフは誰しも、自分の強みを最大限に生かせる業務に【配置】されたいと考えます。そして、そこで努力した結果は適正に【評価】され、それにもとづいた(内的・外的)【報酬】をもらいたい思います。こうして実感を得ることができたら、さらに業務で能力を生かすための【育成】を求めるはずです。したがって、これら4つの視点をどのように最適化していくかを考えるのが、入職したスタッフに対して行うマネジメントです。このマネジメントのポイントは「整合性」。つまり、4つの視点が歯車のように噛み合って初めて、有効に機能するといえます。

一方で、入職前に行うのが【採用】のマネジメントです。人を動かすマネジメントにおいて、この【採用】のマネジメントが8割を決めるといっても過言ではないほど、組織というバスに乗せるべきスタッフを乗せ、乗せるべきでないスタッフを乗せないようにすることは重要です。加えて、【退職】のマネジメントも重要です。万が一、施設や組織に恨みを抱えたまま辞めてしまうと、本人はその恨みを晴らしたいと考え、地域に風評被害を撒き散らすかもしれません。医療は口コミが広がりやすい業界ですから、「この地域で就職先を探しているけど、そんな施設はやめておこう・・・」と、風評被害は当然【採用】に影響してしまいます。

これら6つの視点が、人を動かすマネジメントの全体像です。したがって、スタッフが不毛な多忙に陥る原因が、これら6つの視点のどこにあるのかを考えることが重要になります。

人を動かすマネジメントと

組織を動かすマネジメントは違う

人を動かすマネジメントを考えることはもちろん重要です。現在の医療は、この6つの視点ですら、ほとんど機能していないといっても過言ではないからです。ただ、残念ながらこれだけでは意味がありません。なぜなら、「人は組織に従う」からです。組織というムラ社会に生きるムラ人であるスタッフは、そのムラの掟に従って生活しています。いくらスタッフ自身が「こういうことをしたい!」と思うことがあっても、それがムラの掟と反することであれば、たとえそれが正しいことであっても、行動に移すことができません。

では、そのムラの掟とはなにか。それが「空気」です。したがって、人を動かすマネジメントを行う前に、組織を動かすマネジメントである「空気のマネジメント」を行っていく必要があるのです。

​人を動かすマネジメントと個人学習の限界

医療はスタッフ個人にOJT(業務のなかでの教育)やOff-JT(業務以外での教育)を通じて、あるいは本人の個人学習と成長によって、現場を変えていくことを暗黙の前提としています。しかし残念ながら、いくらOJTやOff-JTを行っても、個人学習をしても、現場は変えられません。これが、人を動かすマネジメントの限界であり、個人学習の限界。個人は組織の空気に抗うことができないからです。

排除の論理と村八分現象

人間の身体にホメオスタシスが働くように、実は組織も放っておけば「このままでいい」「変わりたくない」という現状満足の空気が広がっていきます。そうした組織は、変化に適応するよりも、新しいことを受け入れることを拒み排除する、「排除の論理」が働きます。それが「村八分」現象です。

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© 2013 by Kazuhiro Sato