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小さな成功をつくる

​組織をより良い方向へと変えるポジティブな空気をつくるために、慎重派に対して、推進派が先頭に並んでいるラーメン屋の列の後ろに並びたいと思ってもらえるようにする。そのためには、そもそも推進派がいつも「食べているラーメンが美味しいか」が大切になります。

​取り組みの結果(事実)に対してポジティブに意味づけする

推進派がいつも食べている美味しいラーメン、それが「小さな成功」です。私は、スタッフの身近な出来事のことを「半径5メートル」と呼んでいますが、組織をより良い方向へと変えるというのは、言わば組織全体のあるべき姿(ビジョン)であり、スローガンとしてはもちろん大切なのですが、一方で、スタッフにとっては遠くにある壮大な未来です。したがって、日々の業務の中で、その遠く壮大な未来に近づいてる実感がなければ、歩みを止めてしまいかねません。それが、半径5メートルの中での小さな成功の実感です。

 

多忙な業務の中で取り組み(問題設定型の問題解決)を行うこと自体は大変なことですが、それが小さくてもスタッフ全体の成功体験につながれば、また次の取り組みへの原動力になる。過去の成功体験が未来の成功体験をつくるのであれば、意図的に小さな成功につなげていくことが大切になります。

 

このように考えてみると、さまざまな取り組みをしてもらいながら、それが小さな成功にまでつなげられていないことによって、スタッフのモチベーションを結果的に下げてしまっているといったことが、往々にしてあるのではないでしょうか。

では、どのようにして小さな成功をつくるのか。それが、取り組みの「結果(事実)に対して、ポジティブに意味づけする」という考え方です。一般的に、新しい取り組みであればあるほど、一見すると失敗と思えるような事態になることは予想できます。ただ、そのような場合も、「今回のチャレンジがあったから、次につながるんじゃないでしょうか!」といったようにポジティブに意味づけすることによって、小さな成功につなげていくのです。

 

だからこそ、組織を変革するリーダーにはポジティブに意味づける力が求められます

小さな成功のつくり方

小さな成功の事例をスタッフ全体に広める演出をする

さらに、リーダーは、推進派を中心としたスタッフの取り組みの結果(事実)に対してポジティブに意味づけするに止まらず、小さな成功をつくることができたことを部署のスタッフ全体に広めていく演出を意図的に行っていくことも求められます。なぜなら、取り組みを行った当事者しか小さな成功がつくられたことを知らなければ、それ以外のスタッフに真似をしようと思ってもらえないからです。

 

例えば、次のような例をイメージしてみてください。

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ある治療をこれから受けることになった患者Aさんは、どのような治療を受けるのかがよくわからずに不安を感じていました。その様子を近くで見ていた担当スタッフBさんは、ポケットからメモ用紙を取り出し、治療の手順などについて、得意のイラストで表現して説明してみました。するとAさんから、「こうやってイラストで説明してもらえたから、そんなに怖い治療じゃないことがわかったわ。本当にありがとう」という感謝の言葉をもらうことができました。Aさんは、「とっさに思いついたことだし、イラストで説明するか迷ったけど、やってよかった。Aさんの表情がみるみる明るくなって、嬉しかったなぁ」と、休憩室で一息つきながら、思い返していました。

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この出来事は、この時点では、AさんとBさんの2人でしか共有されていません。したがって、例えばその日のミーティングなどで「イラストで説明してAさんの不安を取り除くことができて感謝された」という小さな成功を他のスタッフに共有することができれば、「私も(別の患者さんにも)同じようにうれば、喜んでもらえるかも!」「躊躇することがあったとしても、患者さんのためになるなら、勇気を出してやってみよう!」といった気づきにつながり、それがポジティブな空気づくりにつながるのではないでしょうか。​そう考えると、Bさんだけがこの小さな成功を自分の胸だけにしまっておくのはもったいないということがわかります。

小さな成功を広める演出をする
抵抗派への対応のポイント

© 2013 by Kazuhiro Sato

 

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