子離れ問題に向き合う

組織変革はトップダウンの戦略とボトムアップの実行の掛け算です。組織はトップの器以上に大きくならないからこそ、トップの自問力が問われます。

トップも陥る子離れ問題

​組織の2:6:2の法則を羅針盤に空気のマネジメントを行っていく前に、変革リーダー自身の心の準備として、自問しなければならない問題があります。

それは、"子離れ問題"です。トップも含め変革リーダーは、スタッフに主体的・自律的に現場の問題解決をしてもらいたいと純粋に思っています。そして、そのためにできる限りの手助けをしたいと、「善意」で手や口を出します。しかし残念ながら、それが大抵スタッフにとって「ジャマ」になってしまっていないでしょうか。この「小さな親切大きなお世話」現象は、変革リーダーが子(スタッフ)離れできていないために起こる現象です。

もちろん、変革リーダーは誰しもスタッフをジャマしようとして手や口を出すのではありません。ですが、善意だからこそ厄介で、変革リーダーはジャマしていることに気づかず、スタッフも「そうはいっても私たちのことを思ってのことだから・・・」と否定できない。結果、子離れ問題が放置され続けてしまいます。

人は「修羅場体験」が育てます。変革リーダーが子離れできずに手や口を出してしまうということは、その成長機会を奪っていることに等しいのです。このように考えると、「可愛い子には旅をさせよ」を実践するために、いかに変革リーダーが子離れ問題に向き合うかがとても重要になるのです。これは、変革リーダー自身が自問するしかありません。

トップでは現場の問題解決はできない

スタッフの成長機会を奪わないようにするためとはいえ、なぜそこまで子離れ問題にこだわるのでしょうか?たとえスタッフが成長できなくても、トップダウンで現場の問題解決プランを立てればいいのではないでしょうか?残念ながら、トップが現場の問題解決プランを正しく立てることはできません。なぜならば、現場から最も遠い場所にいるからです。べき論ではなく現実論の問題は現場で起こっており、それを本当に正しく理解し解決できるのは、その問題の一番近くにいるスタッフだけです。

 

つまり、トップは「海のスイカ割り」をしているのと同じ。目隠しをして棒を闇雲に振りまわしていては、スイカ(問題)に当たらないどころか、周りの人たち(スタッフ)を怪我させてしまうかもしれません。したがって、怪我人をつくらずスイカを割るためには、周りの人たちに「もっと右です!」「あと3歩前です!」とスイカの位置を教えてもらわなければならない。そのためには、周りの人たちにノンテクニカルスキルを身につけてもらい、正しいスイカの位置と割り方を教えてもらうしかありません。これが、トップが正しく棒を振り下ろす(決断する)ために、スタッフにノンテクニカルスキルを高めてもらわなければならない理由です。

ボトムアップの組織変革におけるトップのあるべき姿

これは言い換えると、「魚を与える」のではなく「魚のつり方」を教えるという、トップダウンのマネジメントの大転換が必要になるということです。

 

そして、「魚のつり方」というのがまさに、あるべき姿と現状のギャップための技術(ノンテクニカルスキル)を学ぶことを意味します。スタッフが自分たちの力で問題解決する組織に変革することによって初めて、現状満足の空気から脱却することができるのです。

したがって、まずは「ノンテクニカルスキルとは」のページに移り、スタッフを集めて組織でノンテクニカルスキルの基本を一緒に学んでください。このノンテクニカルスキルの組織学習が、組織変革の準備において最も重要となります。これを経なければ、組織変革はスタートすら切れません。

問題解決シート1.0

自転車の乗り方を覚える

現状満足の空気から脱却するために、問題解決する組織に変革していく。これは、一朝一夕にできることではありません。「ノンテクニカルスキルとは」のページを通じて、ノンテクニカルスキルを組織学習したあとは、いかに現場で実際の問題解決に2W1Hを使ってもらい、実践を通じて反復練習させるかが重要です。

反復練習といっても、それは何回何十回というレベルの話ではありません。テクニカルスキルの世界では、穿刺技術1つ高めるのも何百回と反復練習が必要なように、ノンテクニカルスキルの世界でも、2W1Hを現場で何百回と反復練習しなければ、組織で使い方に「慣れていく」ことはできません。これがわかると、よく「なかなか2W1Hを使えるようにならないんですけど・・・」という意見が出てくる理由がわかります。それは、「使えないのは使わないから」なのです。

一般的に陥りがちな罠は、技術にろくに「慣れ」させもせず、「上達」を求めてしまうこと。ですが、自転車の乗り方もわからないのに、ロードレースには出られません。したがって、まずは2W1Hに「慣れ」させ、そのやり方を覚えさせることから始めることが肝心です。

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© 2013 by Kazuhiro Sato