スモールウィンを演出する

ラーメン屋の行列をつくるためには、そもそもラーメンが美味しくなければなりません。その美味しいラーメンにあたるのが「スモールウィン(小さな成功)」です。理念やビジョンといったビッグワードの世界ではなく、身近で手触り感のあるメリット。このスモールウィンが空気を変えるための唯一の源泉です。

組織変革のキャッチフレーズ

​ロールモデルになってもらうということは、推進派が慎重派にとって「憧れる」「羨ましがられる」存在にならなくてはなりません。いくらラーメンを食べていても、それが不味そうだったら行列に並びたいと思わないからです。そのために組織全体に共有するキャッチフレーズが「本当に頑張っているスタッフが報われる」という言葉です。

空気をつくるためには、一体感を演出する。つまり、「同じ行動を取る」こととともに、「同じ言葉をしゃべる」ことが重要です。たとえ最初は言わされ感満載であっても、「本当に頑張っているスタッフが報われる組織にしましょう!」と一斉に、しかも何度もスタッフ全員に言わせ、耳にタコができるまで何度も聞かせ続ける。そうすると、「これだけずっと言ってたら、たしかにそうなったほうが良い気がしてきた・・・」と、良い意味の勘違いが生まれていきます。

組織変革のキャッチフレーズ

​では、本当に頑張ったスタッフが報われるとはどういうことか。それは、そのスタッフが「スモールウィン(小さな成功)」を実感するということです。スモールウィンとは、日常業務のなかで自分たちの半径5メートル以内に起こった具体的なメリットのことを意味します。

現場で日々懸命に働くスタッフにとって本当に興味があるのは、ビジョンとか目標といった大げさなことではなく、日々スモールウィンを実感できるかどうかです。したがって、変革リーダーは、いかに推進派にスモールウィンを実感してもらえるかに、自分の資源を最大限費やさなくてはなりません。

当然ながら、スモールウィンは組織で問題解決した結果(事実)という材料がなければつくることができません。一方で、その事実がポジティブな結果でなければならないかというと、けっしてそうではありません。それどころか、組織変革の初期段階では、どんな結果の事実でもかまいません(当然、倫理的に問題のある結果などは例外ですが)。なぜならば、事実は意味づけ次第でいかようにもスモールウィンになるからです。​これは、石切職人の話と同じです。つまり、「1つの事実も意味づけ次第で複数の真実になる」のです。したがって、いかに組織で問題解決した事実を意味づける演出をするかが重要になってきます。

 

もうおわかりだと思いますが、なぜわざわざ3ヶ月ごとに表彰をするのかというと、組織で問題解決した事実をポジティブに意味づけるための演出の場にするためです。このスモールウィンづくりこそが、現在の医療に最も欠けている「内的報酬」を設計するということ。極端に言えば、問題解決という新たな業務をさせるのであれば、それにともなった報酬を見返りとして提供しなければ、タダ働きをさせているのに等しいのです。

 

スモールウィンは意味づけ次第。であれば、これはまさに演出の世界です。では、皆さんの組織でポジティブな空気をつくるために、どのような演出をしていきますか?

受け手絶対主義にもとづくポジティブフィードバック

組織のなかでスモールウィンの残高を増やしていくためには、3ヶ月ごとの表彰の場でスモールウィンを演出するだけでは、まったくもって足りません。重要なことは、そのような非日常の場ではなく、日常の場である現場で、業務のなかでスモールウィンをつくっていくことです。そのために有意義なのが、スタッフ同士のポジティブフィードバックです。​つまり、ポジティブフィードバックをルーチン化するのです。

​ポジティブフィードバックと言っても、難しく考える必要はありません。それを行うための第一歩は、「でも」「だが」「しかし」禁止令、すなわちネガティブ接続詞禁止令を出すこと。一般的に、「でも」という言葉をつい使いがちですが、そうすると受け手は「これからネガティブなことを言われるんだな・・・」と受け取り、モチベーションが下がってしまうからです。

したがって、わざわざ現状を否定するような「でも」「だが」「しかし」といったネガティブ接続詞を使わず、その代わりに現状を肯定するような「もっと」「さらに」といったポジティブ接続詞を意識的に使ってください。

大事なことは、スモールウィンは「受け手絶対主義」、あくまでも受け取った者が感じるものであるということです。いくら演出する側が「これはスモールウィンでしょ!?」と言ったところで、相手がそう感じないものはスモールウィンではありません。したがって、常に受け手絶対主義​を前提にして、スモールウィンを演出していってください。

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© 2013 by Kazuhiro Sato