
生成AIにサポートしてもらう
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スタッフDさんは、最初のページで例として示した「ある治療における物品間違えのインシデント」が起こった際の患者Aさんの担当者(当事者)として、問題解決プランを作成することになりました。ただ、通常は、役職者や先輩スタッフにサポートしてもらいながら問題解決プランを作成しているのですが、その日はイレギュラーな業務が重なり、他のスタッフのサポートを受けられない状況でした。Dさんは、
「いざ自分一人で問題解決プランを作成しなければいけない状況になると、どのように考えたらいいのかよくわからない・・・。【現状】に関する情報は一応は入力してみたものの、この内容で大丈夫なのか、見返すたびに不安になる・・・」
と、キーボードを打ち込む指が止まったまま、PCの画面を眺めていました。
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もし、このような状況の中で、生成AIが役職者や先輩スタッフの代わりとしてサポートしてくれたら、心強いのではないでしょうか。そこで、生成AIにそのような振る舞いをしてもらえるようにすることを意図したプロンプトを考えてみました。
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【生成AIにサポートしてもらうプロンプト】
私は、医療現場のスタッフの立場で以下の「現状」に関する情報を入力しますので、より適切な「現状」に関する情報に再構築できるように、私(スタッフ)をサポートしてください。サポートは、以下の7つの条件の基に行ってください。
1. 私が入力した「現状」に関する情報における、どの部分(内容)に対する質問なのか、次のように該当の箇所を示してから質問してください。
「『今回から物品Bに変更になった』という箇所に関して、この物品は具体的には何ですか?」
2. 質問は、条件1で示した該当箇所の内容に対してのみ行い、私の回答に対する追加の質問は行わないでください。
3. 質問は、私が入力した「現状」に関する情報の全体の内容に対してバランスよく(特定の内容に偏らないようにしながら)、最大5回行ってください。
4. 一度の会話での質問は1つに限定し、複数の質問をしないでください。例えば、2つ質問がある場合は、1つ目の質問に対する回答があった後に、2つ目の質問を行ってください。
5. 質問の内容に加えて、その質問の意図も説明してください。
6. 「現状」に関する情報の整理についての会話に限定し、「目的」「あるべき姿」「問題」「原因」「対策」に関する情報の整理についての会話をしないようにしてください。
7. 全ての質問(最大5回)に対する回答が得られたら、私が入力した「現状」に関する情報にそれらの情報を盛り込み、より適切な「現状」に関する情報に再構成してください。
現状:治療開始前の申し送りの際、治療時に患者Aさんに使用する皮膚接触用のフィルムが、今回よりBからCに変更になったという情報がスタッフ全体に共有された。以前からフィルムBの使用時にAさんが痒みを訴えることがあったため、痒みの軽減が期待できるフィルムCを使用することになった経緯がある。しかし、変更に関する情報自体はスタッフ全体に共有されたものの、誰が準備を担当するかは指示しておらず、他のスタッフは誰かが準備してくれるものだと考えていた。担当スタッフやダブルチェックを行ったスタッフは、すでにフィルムCが用意されているものだと思い込んだまま治療を開始した。Aさんの治療開始後30分経過した際、フィルムCではなく従来から使用しているフィルムBが使用されていることを担当スタッフが発見。すぐにフィルムCに交換して治療を再開、その後のAさんの状態変化は、通常の治療と同様であった。
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では、このプロンプトを入力し、どのように生成AIにサポートしてもらうのかを具体的に見てみましょう。なお、問いの答えは私が即興で(適当に)書き込んでみますが、皆さんも当事者(私)の立場で生成AIとのやりとりをイメージしてみてください。
(内容は適宜、動画を止めながら確認してみてください)
(質問を最大5回にするなど、それぞれの内容はあくまでもデモ用に考えたプロンプトですので、実際には自施設や起こった出来事などに応じて工夫することが大切です)

一時的な非効率の谷を浅くする
生成AIにサポートしてもらうことは、私が「一時的な非効率の谷」と呼んでいる考え方に関連します。一時的な非効率の谷というのは、新しい取り組みを行った直後は、その取り組みに慣れていないために、一時的に業務が非効率になりかねないというものです。
ただ、その取り組み自体が正しいのであれば、時間を経て慣れていけば、いずれ業務が効率化するはず。であれば、大事なことは2つ。1つは、「一時的な非効率の谷を乗り越える時間を短くする」こと、言い換えれば、「早く慣れる仕組みをつくる」こと。そして、もう1つは、「一時的な非効率の谷を浅くする」こと、言い換えれば、「スタッフの負担を減らす仕組みをつくる」ことです。そして、生成AIにサポートしてもらうというのは、特に後者に関係することがわかります。
そもそも、日常業務をこなしながら、目の前で起こる数々の問題を解決するプランを作成するというのは、スタッフにとって負担のかかる業務でしょう。特に、冒頭の例のように他スタッフのサポートが得られない、1人で問題解決プランを考えなければならない状況においては。
そのような中、生成AIの活用した問題解決プラン作成の(半)自動化という新しい取り組みによって、問題解決プラン作成に関するスタッフの(労力的・時間的な)負担を相当な程度減らせることが期待できるのは、最初のページのデモ動画を見てもわかります。もし、それに加えて、生成AIに(特に【現状】に関する情報を整理する)サポートしてもらえたら、さらにスタッフの負担が減り、一時的な非効率の谷を浅くすることができるのではないでしょうか。

続きは後日公開予定です。

