• 佐藤 和弘

エスカレーター問題の社会実験続報


空気の支配の力を身近に体感できるエスカレーター。「歩かず立ち止まる」という公式のルールと、「片側は歩く人のために空ける」という非公式のルール(空気)。エスカレーター問題は、公式のルールよりも非公式のルールが優先される典型例と言っても過言ではない。

この空気の支配を打ち破り、どのように「歩かず立ち止まる」ラーメン屋の行列をつくるのか。社会実験を続けるなかで得られた3つの教訓を紹介する。以下、大阪(右側に立ち止まり、左側を歩く)が前提。


【教訓1】ファーストペンギンよりもセカンドペンギンが鍵


たとえ1人目が左側に立ち止まっても、2人目が右側に立ち止まれば、大抵、3人目以降は1人目ではなく2人目の後ろにラーメン屋の行列をつくる。結果、エスカレーターから降りる時には、右側のラーメン屋の長蛇の列が出来、1人目の人は孤立する。逆に、2人目が1人目と同じ左側に立ち止まれば、3人目以降も左側に立ち止まる可能性が高くなる。


【教訓2】新しいラーメン屋の行列は崩れやすい


空気が「安定」するまでには、長い時間を有すると考えることが大切。実際、左側にラーメン屋の行列が出来たとしても、前の人が歩き始めてしまうと、以降の人たちは次々と歩き始める。あくまでも、非公式のルールは「左側を歩く」であり、前の人が歩き始めると、その非公式のルールに従わざるを得なくなってしまうのだろう。だからこそ、一旦ラーメン屋の行列がつくられたからといって、安心してはならない。


【教訓3】ファーストペンギンは、非公式のルールを知らない「ふり」をして身を守る


ラーメン屋の行列づくりの鍵はセカンドペンギンだが、当然ながらファーストペンギンの存在は欠かせない。セカンドペンギンからすると、後ろの人たちから白い目で見られても「前の人(ファーストペンギン)が立ち止まったので、私も立ち止まざるを得なかっただけですから、私を責めないでね」と言い訳ができる。


一方で、ファーストペンギンは責任転嫁できる人がいないため、自分の後ろにラーメン屋の行列ができればできるほど、その人たちからの白い目にさらされる(もしくはそう思い込む)という重圧を背負うことになる。


だからこそ、ファーストペンギンが自分の身を守るために大切なのが、非公式のルールを知らない「ふり」をすること。大阪のエスカレーター問題で言えば、後ろを振り返らずに左側に立ち止まることによって、「あ、この人東京から来た人かな?だから大阪の(非公式の)ルールを知らないんだ」と後ろの人たちに思ってもらうのだ。


ここで肝心なのが、この「後ろを振り返らず」という部分。なぜならば、後ろを振り返って歩きたい人と目が合ってしまうと、「今(非公式のルールは左側を歩くことを)確認しましたよね」と思われてしまうから。


こうして、組織変革のための空気のマネジメントの教訓を得る社会実験は続く。

Recent Posts

See All

メタバースという流行り言葉の背景には、「非現実世界(バーチャル)を現実世界(リアル)に近づけていきたい」という、人間の自然な欲求があるように思います。 あくまでも、僕らが日々生活しているのは、今この瞬間も目の前に見えている現実世界であり、いかにこの現実世界を心身ともに豊かに過ごすかは、誰しもが関心を持つことだと言えます。 その上で、テクノロジーの進化によって、従来の文字や音声の世界から、画像や動画

「問題を正しく解決するよりも、正しい問題を解決することが大事」 もちろん、「問題を正しく解決する」ことも「正しい問題を解決する」ことも、両方大事です。ただ、正しい問題において間違った対策を実行すれば「解決できなかった」だけで終わるかもしれませんが、間違った問題を正しく解決しようとしてしまうと、本当の問題が解決しないだけでなく、それによって別の問題が起こってしまうかもしれません。その意味では、上記の

昨今、「パーパス(経営)」といった言葉が流行っています。「存在意義」と訳されることもあるパーパスですが、これは本来は「目的」という意味になります。経営単位であれ個別業務単位であれ、ある活動は目的を実現するための手段ですから、「何のためにその活動を行うのか?」という目的を押さえることは、これまでも、そしてこれからも重要であり、本来は普遍的なことです。 では、なぜ、このような整理をしたのかというと、と