最近、講演の最初に「知識を覚える」ことと「スキルを身につける」ことは同じではないということをお伝えしています。
これらには、3つの視点の違いがあります。
①学び方の違い(前者は学習、後者は練習)
②時間軸の違い(前者に比べて、後者は時間がかかる)
③方向性の違い(前者は広げ、後者は絞る)
つまり、後者であれば、身につけるべきスキルを絞り、時間をかけて、練習を繰り返すということが求められます。これらの違いを押さえておかなければ、「あれもこれも学ぼうとするが、どれもこれも身につかない」といったことになりかねません。さらに言えば、「人は経験から学ぶ」のであれば、その繰り返しの練習は、現場での実践を通じて行うことが大切になります。
このように考えると、(特に単発の)研修の限界が見えてきます。つまり、研修では、知識を覚えることはできますが、スキルを身につけるということは、その構造上、どうしても難しい(限定的)と言わざるを得ません。
ここでキーワードになるのが、「現場の研修化」です。これは、現場での実践そのものを研修と位置づけるということを意味します。そして、現場の研修化を軸にすると、従来の研修の役割が変わります。それは、言わばあくまでも「ゼロ→イチの場」、つまり、新たな共通言語をつくるきっかけの場としての役割です。一方で、このゼロ→イチの場での学びの体験を経て、研修化された現場での実践を通じた学び(練習)という、言わば「イチ→ジュウの場」での学びをスタートすることになります。
もちろん、ゼロ→イチをつくらなければ、イチ→ジュウもるありません。なので、研修を通じた共通言語づくりのきっかけはとても大切です。ですが、人は忘れる生き物ですから、ゼロ→イチをつくっただけでは、また(ほぼ)ゼロに戻るかもしれませんし、他のイチに埋もれてしまうかもしれません。
だからこそ、イチはジュウに育てていくことを前提にすることによって組織全体に根づかせる、言い換えれば、あいさつのように当たり前に「使える」共通言語に醸成していくことが重要になるのです。
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