「情理的な中立性」というAIの核心的な価値
- 佐藤 和弘
- Jun 4
- 2 min read

「言いにくいことはAIに言ってもらう」
といったように、AIの核心的な価値は、「情理的な中立性」にあると言えます。
例えば、ある業務を新たに行うために、従来の業務をやめる方向にもっていきたいとします。しかし、その従来の業務に強いこだわりをもっているAさんからすると、たとえ新たな業務の有用性を合理的には理解していたとしても、従来の業務をやめることには情理的に抵抗を示すのも無理はありません。
さらに言えば、従来の業務をやめるということは、自分のこだわり自体をないがしろにされたように感じるかもしれません。
「これまでの私の努力はなんだったんだろう・・・」
リーダーのBさんからしても、組織全体のことを考えれば、従来の業務をやめるべきだと「頭」ではわかっていても、これまでAさんが努力してきたことをよく知っているがゆえに「気持ち」的に言いにくい。
このように、問題の本質は合理ではなく情理に踏み込まなければならないことにあります。Aさんには感情があり、Bさんにも感情がある。そのようななかで、相手の情理に不用意に踏み込むと、
新しい業務 vs 従来の業務
という本来の議論から、いつの間にか
Aさん vs Bさん
という対立構造へと発展しかねません。
だからこそ大事なことは、人対人の対立構造がつくられることを防ぐための「コミュニケーションの緩衝材」であり、それが人ではないAIです。
人間のように自然な会話ができる生成AIの登場は驚くべきことですが、このように、コミュニケーションの緩衝材となりうる、情理的な中立性についても注目していくことが大切だと言えます。
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