「身体性」と「現実世界(現場の半径5メートル)への接続」という人間側の圧倒的な優位性
- 佐藤 和弘
- 7 days ago
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人は、何か自分に強く自信のあることを持っていれば、他のことはたいてい寛容になる生き物だととらえてみると、「次の単語(トークン)を予測する」という方法で、あれだけ瞬時に、膨大な情報を、論理的に生成する生成AIを脅威に感じるかどうかもまた、人間側が何を自信として持っているかによって変わってくるでしょう。
このことに関して、医療現場においても、少なくとも当面の間は人間側の圧倒的な優位性として自信を持てることが、「身体性」と「医療現場の半径5メートルへの接続」です。
例えば、ある出来事が起こった際、言語生成AIは、テキスト(文字)や音声を通じてその【現状】を把握しなければなりませんが、身体的に【現状】を把握することができるスタッフ(人間)と、テキストや音声でしか【現状】を把握できない言語生成AIとでは、受け取ることができる情報は雲泥の差になると言えます。
では、よりマルチモーダルにカメラで映像認識すればどうかというと、確かに視覚的な情報(これはもちろん大事)は受け取ることができますが、例えば、その場を支配する空気はどうやって把握できるでしょうか。まさに、人間のような身体性を持っていなければ、目に見えず、手も触れられず、音も何もない空気を把握することはできないでしょう。
このように、「身体性」というたった1つの軸で眺めてみるだけでも、比べるまでもなく人間側が圧倒的な優位性があると言えます。
さらに、この身体性も関連してくるのが「医療現場の半径5メートルへの接続」です。
それぞれの職種でそれぞれの分野に従事している方々の視点で考えてみれば、1日の通常業務のなかで、自分たち(スタッフ)がいなくて生成AIで完結できる業務はどれだけあるでしょうか。おそらく、ほとんどないはずです。それもそのはず、身体性を持っていない生成AIは、自分の力で現場の半径5メートルに接続はできないからです。現場の半径5メートルに接続するためには、人間側が手助けしなければならないからです。
でもAIエージェントは?自律的にタスクをこなすんでしょ?いや、これも同様で、身体性を持っていないAIエージェントが、コンピュータ(バーチャル)の中ではなく、目の前にある現実世界(リアル)で、実業務をどれだけこなすことができるでしょうか。
よく生成AIを思考の自動車と表現していますが、たしかに思考の自動車に乗れるようになって、早く楽に目的地に向かうことができますし、人間の足では行けなかった目的地に向かうこともできるでしょう。けれど、実際に大事なことは、やはり、日常生活の中で、その思考の自動車が(少なくとも現状では)どれだけの実影響があるのか。
このように考えてみると、少なくとも「身体性」と「医療現場の半径5メートルへの接続」という圧倒的な優位性をもっているうちは、あまり生成AIを脅威に思わずに、「目の前にせっかく便利なものがあるんなら、使ったほうが得!」くらいにとらえておいたほうが良いかもしれませんね。



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