top of page
  • Writer's picture佐藤 和弘

有事標準のリーダーに求められる「情理に基づいた非情な意思決定」

Updated: Nov 2, 2021

現場スタッフに共感し過ぎると、合理的な意思決定ができなくなるというのは、特に現場叩き上げのリーダーのジレンマと言えます。


現場の半径5メートルの合理性を仲間とともに守ってきた本人が、組織全体としては合理的だが半径5メートルの中にいるスタッフには非合理的だと感じてしまうようなトップダウンの意思決定をしようとする。その際、「昔(私たちと同じように)言ってたことと、今やろうとしていることは矛盾しているじゃないですか!?」といった他のスタッフからの指摘や、もっと言えば過去の自分の意見と真逆のことをやらなければならないという自己否定を耐えることができるか。これは、極めて難しい問題です。


現場を知ることはもちろん大事。ですが、現場を知りすぎると、合理的な意思決定を阻害するほどの情が生まれやすくなります。これは、スタッフ想いで優しいリーダーほど、陥りやすいジレンマと言えます。したがって、現場スタッフの半径5メートルの情理の世界を理解しながらも、そこに闇雲に足を踏み入れ過ぎないことが大切です。


組織全体(そして中長期的にみればスタッフ1人ひとり)のためになることであるのならば、過去の自己の否定を恐れず、長年の伏線を回収する長編映画のクライマックスを迎えるまで、たとえその時には非情にみえてしまうようなことであっても、合理的に意思決定していく。有事標準のリーダーには、そのような「情理に基づいた非情な意思決定」が求められます。

Recent Posts

See All

ワンフレーズ・ノンテクニカルスキル13

「知的好奇心の罠」 人が成長するうえで知的好奇心は大切。だが、「知らないことを知りたい」という好奇心があるがゆえに、「すでに知っていることには興味が湧かない」「もっと違うことを知りたい」といった意識につながり、その結果、知っていることが「できるようになる」ための反復練習がおざなりになると、あれもこれも学ぼうとするが、どれもこれも身につかない。医療者は、医療の世界のアスリートとして、学習環境だけでな

ワンフレーズ・ノンテクニカルスキル12

「不変的な共通軸を押さえる力」 新しい言葉(概念)は次々と登場するが、昔からある言葉を言い換えていると言えるものも少なくない。例えば、「理念」は組織全体の「目的」にあたるが、「存在意義」と訳される「パーパス」も、直訳すると「目的」。つまり、これらに対する不変的な共通軸は「目的」である。今後新しい言葉が出てきたとしても、流行り廃りに惑わされず、不変的な共通軸を押さえておくことが大切。

ワンフレーズ・ノンテクニカルスキル11

「空気の支配の恐ろしさ」 目に見えず手も触れられないが人に大きな影響力を与える「何か」、それが空気。空気は、「正しいことができない」「間違っていると分かっていてもやらざるを得ない」状況へと人を陥れてしまう、強大な力を持つ。ムラ(組織)の非公式の掟である空気は、時に公式の掟(制度やルール)よりも優先されてしまい、結果、誰も望まない方向へと全員で向かうことになる。

bottom of page