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  • Writer's picture佐藤 和弘

生成AIによって能力をジャンプする


この予測はつまり、2040年までに不足することが見込まれる96万人分の現場スタッフの能力を補うための問題解決を、これから行っていかなければならないことを意味しています。これはもう、


「もはや、人力だけでどうにかできる状況ではない」


というのが、率直な感想ではないでしょうか。であれば、人ではない「何か」の力(能力)を使うしかない。これが、僕が生成AIの活用を強く推している、長期的な理由です。


ただ、短期的に見ても、生成AIの活用を強く推しています。それは、人が能力を高めるというのは、そう簡単にできるものではないと考えているからです。


例えば、ノンテクニカルスキルの「考える力」の領域に当てはまる「論理的思考」ひとつとっても、何回か研修を受けた、何冊か本を読んでみた、くらいで身につくものではないというのは、実は多くの人たちが実感していることなのではないかと思います。これは自然なことで、簡単に論理的思考が身について、スタッフ同士で論理的なコミュニケーションが取れるのであれば、皆さん現場の人間関係で苦労はしてないはずです。


何をもって論理的思考が身についたと考えるかにもよりますが、この能力開発ひとつとっても、何十何百時間、あるいは何年間といった単位で取り組まなければ、本来は難しいものではないかと思います。ここで大事なことは、


「現在の医療現場において、スタッフ1人ひとりに、それだけの教育の機会を提供(投資)できるのか?」


という問いです。時間的にも労力的にも、そしてもちろん金銭的にも。


この問いの答えがノーなのであれば、一足飛びにジャンプできる何らかの工夫が求められます。それが、言わば「人間の脳の拡張」「人間の脳への外部接続」としての生成AIです。


人が本来何十何百時間、何年間とかけてようやく身につけることができる能力を、生成AIによって一気に(間接的にではあるが)獲得する。その何十何百時間、何年間をジャンプして、一気にあるべき姿へと向かっていく。そこには、人力ではたどり着くことができなかった(難しかった)景色が待っているはずです。このように言うと、


「これまであんなに苦労して能力開発に努力してきたのに・・・」


と嘆きたくなる人もいるかもしれません(もちろん、僕自身も例外ではありません)。ただ、例えば「論理的に問題解決プランを作成する」といったこと自体が、人間の本当の能力を発揮する場面ではないはずです。その答えは、僕が以前から言っている「そういう問題じゃない問題」にあります。いくら生成AIが作成した論理的に正しい問題解決プランがあったとしても、


「そういう問題じゃないんです!私は◯◯さんのことを信頼しているからやるんです!」


といったように、その問題解決プランに人の情理が通ってこそ、他者を動かすことができるリアルなプランになる。このようにとらえてみると、生成AI時代に人間側が本当にこだわるべきは、生成AIの生成物を「(いくら生成AIが素晴らしいものをつくり出したとしても)そういう問題じゃない!」と言えるような領域ではないかと思います。そしてその先には、本来やりたかったことが待っているかもしれません。

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